「先生国語わからへんヮ」
「何ゆうてんネン、わからへんチャウやろ、思うた通り書いたらええネン」
「何、書いたらエエかわからへんネン」
「何か感じたたことあるやろナ」
「ナーンも感じへんモン」
「…」
何も感じない。そんはずはないのです。
なぜなら、その子がイヌが大好きなのを私は知っています。
イヌだけに感情を示すのか、そんなことないですよね。
つい一昨日も、テストの点が悪いと悔し泣きしたんですから。
では、なぜ彼・彼女らは「ナーンも感じへんモン」というのでしょうか。
実はそこに今の中学受験生、ひいては小学生全般の国語力低下を解明する視点があります。
感じているのに自身の感覚を具体的に言語化できない状況。
語彙力の完全な欠如(語彙力の不足ではありません)。
その一因として読書量の不足が挙げられ、久しくなります。
しかし、事態は改善に向かうどころか悪化の一途を辿っています。
学校での5分間読書も焼け石に水、音読の奨励も大きなうねりとはなっていません。
感じることを如何に言語化するか。言語化に必要なツール(語彙力)を如何に備えていくか。
私のところではこんな取り組みをしています。
自分の感情を素直に表現できるように簡単なフレーズを使って、起承転結の順を追い短文化させます。
生徒が自分の感情や登場人物の心理を感じたまま文字化すること、書くことへの精神的負担・抵抗感を薄めることのみを目的とします。
また、『岩淵悦太郎-国語の心』『寺田寅彦-疑問と空想』『森本哲郎-日本のたたずまい・音』『加藤秀俊-メデニアの周辺』『亀井勝一郎-黄金のことば』『小林秀雄-美を求める』『大岡信-ことばの力』『和辻哲郎-風土』等、小学生には難解とも思われるこれらの作品の音読を繰り返すことを昔から推奨しています。
つまり難読です。
今は、大部分「ことばの学校」というコンテンツがその役割を果たし、子どもたちの負担も軽減しましたが、本質は変わりません。
そして、詰まらずに読めるようになると辞書を使ってわからない言葉を調べ、十分な理解を目指します。
ここで大切なのは、わからない言葉を生徒任せにせず予めこちらで指示しておくことです。
こうすることで辞書引きのレベルを一定に保つことができます。
この後、設問に取り組みますが、その出来にはあまりこだわりません。
目的は、あくまで生徒を論理的で視野の拡充や意識の啓発に繋がる文章にふれさせることです。
2つの取り組みは併用し、前者からも後者からも同時に進めます。
目指す目的地は自分の感じたことを自分の言葉で書けるようになることです。
生徒は脳の中で汗を書くことになります。
しかし、それが生徒たちの明日のことばの力に繋がります。
中学受験を考える学習塾『アルゴ・システムズ』
代表 村元 謙二(文責)
京都市中京区柳水町71-1-103 TEL.075-221-5101