アルゴの中学受験日記

中学受験を通じて成績と連動する真の努力の形を伝えます

読書の森

14ひきのねずみたち

14ひきのねずみたち

私の好きな絵本の一つに『14ひきの…シリーズ(いわむらかずお作・童心社・既刊12冊)』があります。この絵本には、おじいさんとおばあさん、お父さんとお母さん、それに10ぴきの子どものねずみたちの森の中で山いもをほったり、かぼちゃを育てたり、ピクニックをする話が郷愁溢れるタッチで描かれています。

初めて出会ったのは、上の子の絵本を捜していた頃ですから、30年以上昔になります。今でも、立ち寄る本屋さんには最前列に置かれ、そのキャッチに「発刊25年・累計800万部突破」とありますから、この読み継がれていく流れはもう絵本という小さなマーケットを考えれば奇跡です。この本で大きくなった女の子が母になり、我が子に買い与えているということもあるでしょう。私も孫ができたら最初に買う絵本はこれと決めています。

この絵本の根底には、「生きるためにこそ食べる」そして「食べるために家族全員が協力する」という意識が脈々と流れています。そんなねずみたちの姿を眺めていると、食べ物が簡単に手に入る現代のありがたさに気づかされます。そんな日本ですが、実体は非常に脆弱で、日本の食料自給率はわずか40%。半分以上は外国からの輸入にたよっています。それなのに、食料全体の30%は食べ残しとして捨てられているという話も耳にします。

スーパーに行けばいつでも買える野菜や肉ですが、ほとんどがたくさんの原油や資金を使い輸入されています。外国が「日本に輸出するのは、もうやめた」といえば、たちまち日本人は食べる物がなくなってしまいます。最近ではバイオ燃料がトウモロコシやサトウキビの品薄感をつくりました。この状況が更に進めば、人間の口に入る食料が減少し、車はトウモロコシを食べて走り、人間はおなかを減らす社会になるかもしれません。

土地や気候と、人間の体は一体であるという意味で、「身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。「一里四方のものを食べていれば安楽」という昔の言い伝えを聞いたこともあります。あるべき自然に寄り添いながら共生していた時代が、私たちにもほんの少し前まであったはずです。これらの言葉は、そんな時代の存在を示す証ですが、今、言葉の化石になろうとしています。

私たちは、今、『14ひきの…』のねずみたちのように、謙虚に食べられることの幸せを感じ、自然の恵みに感謝する気持ちをもう一度持つべき時代を迎えているような気がしてなりません。

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