アルゴの中学受験日記

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読書の森

宮沢賢治の『いちょうの実』

宮沢賢治の『いちょうの実』

・・・東の空はもうやさしいききょうの花びらのようにあやしい底光りをはじめました。・・・

これは、宮沢賢治の書いた『いちょうの実』というお話の一部です。宮沢賢治という人はご存じの通り、岩手県で営農指導をしながら珠玉の詩や童話を残した人です。賢治の文章は、岩手の自然そのままに、美しく、とても清らかな感じがします。

『いちょうの実』は、冬のはじめの寒い朝、いちょうの実たちがいっせいに旅立っていくお話です。夜の明ける直前のようすが先ほどの部分で、やがてだんだん朝になっていきます。

・・・東の空のききょうの花びらはもういつかしぼんだように力なくなり、朝の白光りがあらわれはじめました。・・・

そして、さらに時間がたちます。

・・・東の空が白くもえ、ユラリユラリとゆれはじめました。・・・

・・・とつぜん光のたばが黄金(きん)の矢のように一度に飛んできました。・・・

こうして、朝日があらわれて、ついにいちょうの実たちの旅立ちの時です。

・・・北から氷のようにつめたいすきとおった風がゴーッとふいてきました。・・・

とうとういちょうの実たちは飛んでいき、おかあさんのいちょうの木は、ひとり残されます。最後に、

・・・お日さまはもえる宝石のように東の空にかかり、あらんかぎりのかがやきを悲しむ母親の木と旅にでた子どもらとに投げておやりなさいました。・・・

これでおしまいです。どうでしょうか。きれいなたとえの表現が、本当にたくさん出てきます。

空や光にまるで命があるかのようです。優れた比喩表現は、無味乾燥の言葉に瑞々しい生命をも吹き込むことができるのです。自分らしい表現を考えましょう。たとえには、そのひとのひととなりが如実に出るものです。

賢治には賢治らしいきりりとした美しいたとえ、みなさんにはみなさんらしいキラキラ輝くすばらしいたとえがあるはずです。

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