池田晶子さんの『14歳からの哲学』のタイトルは、なぜ「14歳」なのか。それについて、最後の著作となった『暮らしの哲学』に、興味深い話が載っていました。
一時、14歳の少年が犯す犯罪について、社会問題化したこともありました。池田さんによると、精神の発達において、人は14歳で「人間として生まれる」のだと言います。つまり、それまでは生物として生まれ、育ってくる。そして14歳ごろになって、初めて言語と論理を獲得するのだというのです。つまり、ものごとを「理屈によって理解できるようになる。」のが14歳ということになります。
そして実際、このような体験を書かれていました。ある中学へ出張授業に行くことになり、前もって生徒達に「戦争は本当に悪なのだろうか」というコラムを読んでもらい、それについての作文を書いてもらったそうです。そうしたら、なんと1年生の半分近くが、「戦争は悪ではないとわかりました」という作文を書いたというのです!
これが3年生になると、「ちゃんと自分で考えることが大切だとわかりました」というふうに書いてくるそうです。ここに、13歳と15歳との間、14歳という大切な時期があると、彼女は言います。13歳は、まだ、自分の言葉で考える訓練ができていない。だから、言われたまま素直に、うなずいてしまう。まだ、一人前の人間として生まれていないのです。
当塾へ通うお子さんにも、14歳前か、ちょうどその年頃の生徒さんがいます。私たちは、ちょうど人として生まれる時期に深く関わることになります。「自分の言葉で考え、自分の言葉で語る」ための訓練がどんなに大切か思うところです。14歳ごろにちゃんと「人として生まれることができるかどうか」によって、その子の人生は大きく変化します。