ホタルが見られる時期が今年も来て、過ぎていきました。
みなさんは蛍を見たことがありますか?ホタルは清流にしかいません。
絹糸をつくる蚕という蛾の幼虫がいます。蚕は桑の葉しか食べません。
それと同じように、ホタルは幼虫時代に「かわにな」という虫しか食べません。
「かわにな」が清流にしかいないため、ホタルも水のきれいな場所にしか生息できないことになります。
日本人は、昔からホタルの美しい輝きに心をよせてきました。
平安時代には、人の魂が抜け出て飛び交っているのだと考えていたようです。
ホタルが成虫になって飛び回ることのできる期間はたったの十日間。
この短い期間の「虫が光る」という現象を人は魂の流転に結び付け、儚きもの、いと憐れと思い召していたのです。
水の音に涼しさを感じたり、紅葉を愛でて楽しむという、直接的な感覚以外のものに思いを馳せることができるのは、日本人のすばらしい感性の為せる技です。
このすばらしい感性の一断面を切り取り表現していくことに、文章作法の醍醐味があります。
子どもたちの文章表現は、はじめは、「おいしかった」「楽しかった」というわかりやすい気持ちが書かれています。
それが、だんだん学習を続けていくと「おいしく感じられることの幸せ」や「楽しみを自分で見つける喜び」など、複雑な感情が表されるようになります。
思いを言葉にすることだけでも、かなりたいへんな作業です。
それをさらに進めて、言葉を選んで気持ちにぴったりの表現を工夫することで、子どもたちの言葉は確実に豊かになっています。
同時に、感受性は豊かになり、心も優しい思いに溢れていきます。
この変化は、どのお子さんにも必ずあらわれます。
最初ホタルの光にも似たかほそけき煌めきですが、だんだん力強く輝き始め、私たちを魅了していくのです。