よく世間では仕事のうまい人はどんな仕事でも同じように上手だが、仕事の下手な人はそれぞれに下手だ、というような言い方をします。
これは健康と病気の関係にも当てはまります。健康な人は皆同じように健康ですが、病気の人はそれぞれに色々な病気です。
ところで、現代の医学や科学や教育は、欠点に対して対処療法をして直すという発想しがちになります。
ところが、そのような方法では、目の前の症状は多少改善されても、本質に切り込んでいないため病気の種類がどんどん増えていき、病人自体は減りません。
病気の原因にいろいろな名前をつけて治し方を工夫していくよりも、大切なことは、トータルな人間本来が持つ自然治癒力を高め、身体全体を健康にするという姿勢が大切です。
そうしないと、いつまでたっても病気とのいたちごっこは終わりません。
学習についても事情は似ています。学習の苦手なところを細かく分けて、それぞれの欠点に適した対処療法的な処方箋を書くというようなことをしても、欠点はなかなか直りません。
健康における自然治癒力と同じものが、学習においては読む力と聞く力ではないでしょうか。
注意深く読む力と集中して聞く力は、学習が学ぶ=まねるで始まる限り、学習の自然治癒力にあたります。
注意深く読む量が増え、集中して聞く力が着いてくると、自然と学力の上昇が生まれてきます。
具体的には、学習開始時期における読書と対話の影響が大きでしょう。
読書は読み聞かせに尽きます。
中学入試において、国語の長文問題でも算数の文章題の理解でも、言語認識の差が得点につながります。
努々疎かにはできません。
自分で読み取れないうちは小5でも小6でも読み聞かせを行えばいいのです。
対話は、ご両親がお子さんにいろいろなことを話しかけることから始まり、日本語のインプットを増やしていくという形に広げていきます。
読み聞かせにしても話しかけにしても、一朝一夕にその効果を見ることはありません。
日々の生活の中で意識せずに続けていくとき、自ずと効果を表してくるものです。
そういう意味では、まさに健康を意識したこつこつとした取り組みが自然治癒力という健康の基礎力となるように、読書と対話も学習の自然治癒力にほかなりません。